メニュー

認知症の診断・治療

認知症とは

色々な原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態のことです。
2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は、約16.7%、約602万人であり、約6人に1人となるため、そのご家族も含めるとかなり多くの方が認知症の方と関わっていることになります。
あまり恐れ過ぎずに、認知症と付き合っていく必要があります。

・認知症が直接の死亡原因になることはありません。
・通常、ゆっくりと穏やかに進行するため、物忘れのみで長期間経過することもあります。
・徘徊、暴力などの困った症状もすぐに表れることはありません。
・認知症のみで寝たきりになることは少ないです。

認知症の原因としてはアルツハイマー病が最も多く、様々な疾患が認知症の原因になりえますが、次の疾患が代表的です。

  • アルツハイマー型認知症(約67%)
  • 脳血管性認知症(約20%)
  • レビー小体型認知症(約5%)
  • 前頭側頭型認知症(約1%)

その他、甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症など、比較的早期に治療可能な病気による認知症もあるため、最初に画像診断や血液検査を行い精査する必要があります。

アルツハイマー型認知症
・脳にアミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が異常にたまり、それに伴い脳細胞が損傷したり神経伝達物質が減少したりして、脳の全体が萎縮して引き起こされると考えられています。しかし、なぜそうしたたんぱく質が蓄積してしまうのかははっきりわかっていません。
・発症(診断)時点で、既に長年にわたり原因たんぱく質が蓄積しているため、現在では効果的な予防や根本的治療が困難です。
・高齢となるほど多くみられますが、遺伝との関連性は薄いとされています。40-50歳代など若い世代で発症することもありますが、その場合は遺伝性の場合もあります。
・ 症状は、記憶障害、見当識障害、遂行機能障害、注意障害、失行などの中核症状と、物盗られ妄想・易怒性・昼夜逆転・徘徊などの周辺症状がありますが、人により症状の出方は異なり、その他の認知症でもみられます。

レビー小体型認知症
・レビー小体という変性した細胞が、脳の大脳皮質や脳幹部に生じ、その影響で脳神経細胞が破壊され生じる認知症です。なぜレビー小体が生じるのかはまだわかっていません。
・脳にレビー小体が生じることにより引き起こされる病気には、他にパーキンソン病があり、併発が多くみられます。
・発症は高齢者が多いですが、若いときにパーキンソン病を発症し、レビー小体型認知症へ移行していくこともあります。男性がやや多いです。
・ 症状は、他の認知症と同じく物忘れなどの記憶障害や見当識障害、ものごとを計画立てて行うことが難しくなる実行機能障害などの症状もみられますが、手足の震え・動作緩慢・小刻み歩行などのパーキンソン症状や幻視、レム睡眠行動障害、自律神経症状、意識レベルの極端な変動のようなレビー小体型認知症に特有の症状もみられます。
・ 調子の良い時と悪い時をくりかえしながら徐々に進行し、ときに急速に進行することもあります。

脳血管性認知症
・ 脳梗塞や脳出血などの脳の血管の病気により、脳の細胞に酸素や栄養が送られなくなるため、細胞が壊れてしまい、本来の機能を失うことによって認知症が起こります。
・ 症状は、記銘力や遂行能力の低下はみられるが、判断力や理解力、専門知識などは保たれている「まだら認知症」、1日の中でも変動する意欲低下、抑うつ状態、感情のコントロールがうまくいかない感情失禁などがみられます。
・ 脳の障害を受けた部位によって運動障害や感覚障害、言語障害などを伴います。
・脳血管障害の後に認知症状が急激に出現し、脳梗塞などの再発により症状も階段状に進行するため、再発予防の治療が必要です。 


認知症の診断

・ CT、MRI、脳血流検査などの画像検査、記憶・知能などに関する心理検査(長谷川式簡易知能評価スケール、MMSEなど)に加え、早期に治療可能な疾患の鑑別診断のための血液検査などを行います。
・ 生活の状況や困ることなどを本人やご家族から時間をかけて問診を行い、本人の検査結果を総合して診断を行います

認知症の診断基準
・ 記憶力や認知能力の低下(判断と思考、情報処理全般)によって、日常生活活動や遂行能力に支障をきたしている
・ 情緒易変性、易刺激性、無感情、社会的行動の粗雑化のうち1項目以上を認める
・ 上記の症状が6ヶ月以上存在する
  などの基準があります。


認知症の治療

現在、主な認知症の進行を完全に止める方法や、根本的な治療方法はみつかっていません。
そのため、認知症の治療は、認知症の進行を緩やかにし、生活の質を高めることを目的とします。
認知症の治療には大きく分けて「薬物治療」と「非薬物療法」があります。

薬物治療
認知症に対する薬物療法は大きく分けて、中核症状の進行を抑えるものと、行動・心理症状の軽減のためのものとに分けられます。
中核症状の進行を抑える薬は主にアルツハイマー型認知症に用いられます。
・認知機能改善のための薬はドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン(貼り薬)、メマンチン(他剤と併用可)の4種類です。
・行動・心理症状の軽減のための薬は、抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬、抑肝散などの漢方薬を症状により使用することがあります。
嘔吐・下痢、徐脈などの不整脈、興奮、易怒性などの副作用が生じる場合があります。
レビー小体型認知症で幻視がある場合でも、幻視自体があまり生活上問題になっていない場合は薬は不要です。

非薬物療法
非薬物療法は、薬物治療と同様、認知症を治せる療法ではありませんが、認知症の方の生活の質を高めるという点では、薬物療法よりも有効であることも多いです。

・運動療法 
散歩や体操などの運動により体を動かすことが脳の活性化につながり、さらに散歩中に五感を通して得られる多くの情報が、脳に対する大きな刺激となります。
・認知リハビリテーション 
脳のトレーニングと呼ばれるゲームやパズル、計算ドリルなどを使用した学習療法、書籍の音読、麻雀など、頭を使う活動を行うことにより、認知機能の維持や回復を目指します。
・回想法
自分の思い出を人に話すことで脳に刺激を与えると同時に、精神的な安定を図ります。認知症を発症すると、直前の出来事を記憶することは難しくなりますが、自分の若い頃などの過去の記憶は明確に思い出せることがあります。
過去に自分が経験してきたことを伝えることにより、自尊心を得ることにもつながり、日々に活気が出るようになっていき、認知症の症状の抑制や改善の効果が期待できます。
・音楽療法
過去に流行した歌の歌詞や楽曲を聴くことは、当時の出来事を思い出すことにもつながり、脳に刺激を与えることができます。
認知症が進行して言葉をうまく話せない方でも、自分のよく知っている歌ならしっかりと歌うことができ、それによって自信を取り戻すことができたというケースもあり、精神的な落ち着きを取り戻すこともあります。

その他、リアリティ・オリエンテーション、園芸療法、アロマテラピー、レクリエーション療法、ペット療法などがあります。


認知症を予防するには

・1日30分~1時間程度の有酸素運動などの定期的な運動 
・バランスのとれた食事 魚、野菜・果物、大豆など穀類、オリーブオイルなどの地中海食がよいと言われています。
・社会的参加 余暇活動 家族・友人とのコミュニケーション
・適度な飲酒 赤ワイン250ml/日など
・禁煙 喫煙は認知症のリスクを高めます。約2倍という報告もあります。
・中年期以降の高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満の改善も重要です。

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME