メニュー

不眠症について

不眠症とは、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの症状が1ヶ月以上続き、日中に疲労感・意欲低下・集中力低下などの不調が生じる状態です。日本人の約5人に1人、60歳以上の方では約3人に1人が睡眠問題で悩んでいるとされています。

不眠症のタイプ

不眠症は以下の4つのタイプに分けられます。

・床についてもなかなか(30分~1時間以上)眠りにつけない「入眠障害」

・いったん眠りについても、眠りが浅く途中で何度も目が覚める「中途覚醒」

・通常よりかなり早い時間に目が覚めてしまう「早朝覚醒」

・眠りが浅く、睡眠時間の割に熟睡した感じが得られない「熟眠障害」

必要な睡眠時間は?

日本人の睡眠時間は平均して7時間程度ですが、健康な人でも年齢とともに中途覚醒や早朝覚醒が増えてきます。
ある研究によると、夜間の睡眠時間は10歳までは8~9時間、15歳で約8時間、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳で約6時間と、加齢とともに必要な睡眠時間が少なくなるということが報告されています。
米国の大規模調査では、睡眠時間が7時間の人が最も死亡率が低く、8時間を超える睡眠時間の人は死亡リスクが上昇するという結果がでており、必要な睡眠時間以上に眠ることが健康リスクになると考えられます。
また、不眠症は「日中に不調が出現する」ことが問題であり、昼間の生活に支障がなければ不眠症とは診断されず、睡眠時間が短いことや目覚める回数にこだわりすぎないことが大事です。

不眠症の原因

不眠症は身体や精神的な問題、生活習慣、環境要因などが主な原因です。

・睡眠時無呼吸症候群・レストレスレッグス症候群・周期性四肢運動障害・うつ病による睡眠障害などは、専門的な診断や治療が必要となります。

・咳や呼吸困難感などの症状を生じる呼吸器疾患や心疾患、身体の痛みやかゆみを伴う疾患でも不眠が生じるため、身体的な病気の治療により、不眠が改善する場合もあります。

・ストレス、緊張、睡眠に対するこだわりなど精神的な問題や、アルコール、たばこ(ニコチン)、カフェインの摂取、薬の副作用、運動不足などの生活習慣、暑さや騒音、明るさなどの環境要因が影響することもあります。

・交替制勤務や時差、週末の夜ふかしや休日の寝坊、昼寝のしすぎは体内時計を乱し、不眠につながります。

不眠症を改善するためにまず行うこと

・就寝・起床時間を一定にする 
平日・週末にかかわらず同じ時刻に起床・就床する習慣を身につけることが大事です。

・早い時間に寝ようとしない 
時々、夜9時には床に入るという方がいますが、必要な睡眠時間は、高齢となるにつれて短くなるため、就寝する時間が早すぎると深夜に目が覚めてしまいます。

・睡眠時間にこだわらない
睡眠時間には個人差があります。8時間眠りたいなどと目標を立てず、どうしても眠気がないときは思い切って寝床から出ることも必要です。
眠れないのに我慢して無理に寝床にいると、不眠が悪化することが分かっています。
常識的な範囲内で寝床にいる時間を決めておき、眠れなければ寝床から出て、前日の睡眠状態にかかわらず日中はなるべく活動的に過ごすことが大切です。前の晩に眠れなくて仕事や勉強に集中できない、眠くてしようがないという場合には、昼休みなどに短時間昼寝をするといいでしょう。

・昼寝は30分以内に 
日中に眠気があるときは午後早い時間(15時頃)までに30分以内の昼寝をとると眠気が覚めます。10-15分など短時間でも脳の疲労をとるのに効果がありますが、それ以上、昼寝すると夜寝つきが悪くなります。

・適度の運動をする
ほどよい肉体的疲労は心地よい眠りを生み出してくれます。激しい運動は刺激になって寝付きを悪くするため、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を夕方から就寝3時間前までに行うのが効果的です。その時間帯に運動するのが難しい場合は、ライフスタイルに合わせて、無理なく運動を続けられることが大切です。

・自分流のストレス解消法を
音楽・読書・スポーツ・旅行など、自分に合った趣味をみつけて気分転換をはかり、ストレスをためないようにしましょう。

・寝る前にリラックスする
なかなか寝付けないときに、眠りたいのに眠れない、と焦るほど、頭は冴えてしまいます。覚醒から睡眠に移行するためには自律神経系が交感神経優位から副交感神経優位に切り替わる必要がありますが、「眠らなければ」と考えていると緊張が高まり、交感神経が優位な状態となります。こうなると、ますます眠れなくなるという悪循環に陥ってしまいます。
眠るために大切なのは、リラックスをすることです。入浴、ストレッチ、アロマ、好きな音楽など自分に合った方法でリラックスできると良いです。入浴は、眠りにつきたい時間の1~2時間程度前に38-40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり入るのが効果的です。

・寝酒はやめる
アルコールを飲むと眠りに入りやすくなりますが、寝酒は睡眠の質を下げ、かえって目が覚める回数を増やしてしまいます。飲酒後は深い睡眠が減り、夜中に目が覚めたり、早朝覚醒が増えたりして熟眠感が得られなくなります。飲酒は、夜早めの時間に適量にしましょう。

・眠りやすい環境をつくる
ベッド・布団・枕などは自分に合ったものを選び、照明は不安にならない程度に部屋を暗くして、温度は20℃前後で、湿度は40%-70%くらいに保つのが良いといわれています。

・寝る前のスマートフォン、パソコン、タブレットの使用はやめる
スマートフォン、パソコン、テレビ、ゲーム機器などのデジタル機器の画面からは、ブルーライトと言われる青色光が発せられます。ブルーライトは、少しでは問題ありませんが、長時間にわたり画面を見ていると必要以上にブルーライトを浴びてしまい、睡眠の質を低下させてしまいます。寝る前や夜間にブルーライトを浴びると、睡眠ホルモンといわれているメラトニンの分泌が抑制され、体内時計が後ろにずれてなかなか眠れず、朝起きるのがつらいといった状態を引き起こします。



不眠症の薬物療法

以上のようなことに気をつけても、どうしても不眠が治らないときには睡眠薬による治療を行います。
睡眠薬は一度使い始めるとやめられなくなり、次第に量も増えていくので怖いと思い込んでいる方も多いようですが、最近の睡眠薬は副作用も少ないため、適切に使用すれば、あまり心配しなくても大丈夫です。

最近、主に使用されるのは、ベンゾジアゼピン受容体作用薬、オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作用薬です。

ベンゾジアゼピン系薬には超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分類され、不眠のタイプによっても選択されますが、まずは超短時間型または短時間型から開始し、経過により中間型、長時間型へ変更していくことが多いです。

オレキシン受容体拮抗薬のスボレキサントやレンボレキサントは、覚醒を促進するオレキシンの受容体への結合を阻害し、覚醒を抑制することで睡眠を誘導する新しい作用機序のお薬です。ベンゾジアゼピン系薬と比較し、依存性が少なく、急に止めた時に生じる不眠の悪化の可能性も低いと考えられるため、使用される頻度が増えています。

メラトニン受容体作用薬のラメルテオンは、メラトニン受容体に作用することで体内時計を調節し、睡眠と覚醒のリズムを整えます。このような作用機序のため、ラメルテオンの効果が表れるには時間がかかり、効果もやや弱いですが、副作用は少ないです。

以上のような薬をしばらく続けて、眠れる自信がついてきたら、医師の指示のもとで薬の減量を検討します。薬の減量はあせらずゆっくりと行い、薬がなくても眠れる自信を持てるようにコントロールしていくことが大切です。現在、睡眠薬を服用して不眠が改善している方は、ご自分の判断で急に薬を中止すると不眠が悪化することがあるため、必ず医師に相談するようにしましょう。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME