パーキンソン病の診断・治療
パーキンソン病は手足が震えたり、体を動かすことが困難でゆっくりになるといった特徴的な運動機能障害を示す脳神経疾患です。19世紀に英国の医師であったジェームス・パーキンソンによって最初に記載されたことからこの名前がつけられました。特徴的な運動症状は以下の4つで、これを四徴といいます。
振戦
1秒間に10回未満の比較的ゆっくりとした震えです。手足の他に口唇を含む顔面にみられることもあります。安静時に目立ち、動作を開始すると減弱または消失することが多いのも特徴です。稀に姿勢時に一旦消失して、10秒ほど経ってから再度震えが強くなる場合があります。片側の上肢から始まることが多いです。
筋固縮
筋肉に緊張があり、他者が手足を動かした時にうまく力を抜くことができません。通常、筋固縮も初発症状の側で強く、左右差があります。他者が動かしたときにガクガクと歯車がかみ合うような抵抗を感じることが特徴です(歯車様固縮)。
無動・寡動(動作緩慢)
動作が全般的にゆっくりになります。歩く時の歩幅が小さくなったり、動作を繰り返すうちに動きがさらにだんだんと小さくなったりすることもあります。また、歩行時の手の振りが小さく。特に動作の開始が苦手となり最初の一歩が出なくなったり(すくみ足)します。顔面の表情が乏しくなったり(仮面様顔貌)、話すときも小声で歯切れがわるくなったり、よだれがこぼれやすくなったりします。
姿勢反射障害
バランスが崩れたとき、これを支えるための脚の一歩がでないため、転倒しやすくなります。脚が出ても小刻みで突進様となったり、倒れる際にも両手を広げるなどの反射的動作ができず、立っていた時の姿勢のまま棒のように倒れたりします。特に後方に転びやすくなります。
その他にも、便秘、起立性低血圧などの自律神経症状、嗅覚・味覚低下、レム睡眠行動異常やむずむず脚症候群などの睡眠障害、日中の過渡の眠気や突然の入眠、不安・うつ状態、アパシー(感情の平坦化)、幻覚妄想、認知障害など様々な非運動症状もあります。
実際にはそうした症状が様々な組み合わせでみられますが、その程度により、重症度が分類されています。このうち、ヤール重症度3度以上、生活機能障害2度以上の場合、厚生労働省の特定疾患の認定対象となります(それ以下の場合は対象となりません)。
パーキンソン病の診断
上記のような症状と経過、抗パーキンソン病薬への効果の有無により診断します。頭部CTで脳血管障害などの異常がないか確認する必要があります。MIBG心筋シンチグラフィーなどやや特殊な検査を補助的に行う場合があります(当院では施行できないため必要な場合は可能な医療機関にご紹介します)。
パーキンソン病の治療
現在のところ疾患の進行を抑える作用のある薬はなく、全て症状を改善するための対症療法薬となります。パーキンソン病では、脳内のドパミンが不足しているため、ドパミンを補うLドーパ製剤や、ドーパミン受容体に結合してドパミンと同様の作用を起こすドパミンアゴニスト、ドパミンの分解を阻害するMAO-B阻害薬などを使用します。比較的早期に治療を開始した方が、薬の反応もよく、良い状態を維持できる期間が長くなるため、早期の治療が推奨されています。